2021.11.01  【責任編集】ラーニング・ツリービジネスアナリシス研修とは?

日経クロステックで2010年6月に投稿された『「ビジネスアナリスト」は日本で定着するか』というコンテンツがあります。日本では10年以上前からビジネスアナリシスに関する情報は発信されており、プロジェクト成功における重要性は高まってきていますが、役割が明確に理解されているとは言い難いかもしれません。

一方、欧米諸国では広くその役割が知られており、「ビジネスアナリスト」と呼ばれるポジションまで確立しています。ラーニング・ツリー・インターナショナルでも多くの企業にビジネスアナリシス研修を実施してきましたが、その概要をしっかりと理解できている企業はやはり少ないように感じます。グローバルで認められる資格試験もあり、是非、勉強する機会を作ってみる事をおすすめします。

そこで今回は、ビジネスアナリシスとは何か?を初心者向けにわかりやすく解説していきます。貴社のビジネス課題を解決するヒントがここにあるかもしれません。

そもそも「ビジネスアナリシス」とは?

そのままの意味で受け止めると「ビジネスを解析すること」となりますが、ビジネスアナリシスの本質はもっと深いところにあります。まず簡単に説明しますと、ビジネスアナリシスとはプロジェクト全体を推進する活動であり、クライアント・ステークホルダー・ソリューションチームといった関係者を結びつける役割があります。

具体的にはビジネス課題を改善したり、ビジネス機会を増やしたりするための課題を特定し、特定の状況に対してステークホルダーに改善方法を提案することで、計画的な変化を引き起こす活動を指します。

IIBA BABOK® v3による定義

IIBAとは「International Institute of Business Analysis(ビジネスアナリシスの国際協会)」の略であり、このIIBAがビジネスアナリシスの方法論を体系的にまとめたものがIIBA BABOK® v3です。ちなみにBABOKは「Business Analysis Body of Knowledge(ビジネスアナリシスの知識体系)」の略になります。

このIIBA BABOK® v3では、ビジネスアナリシスを次のように定義しています。

「ビジネスアナリシスは、ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動である。」
出典:「BA(Business Analysis)とは」IIBA Japan Shapter

ビジネスアナリシスを通じて現状課題の把握とソリューションの理解を促すことで、企業は「チェンジ(変革)」の必要性と合理的根拠を明確にできます。つまり、ビジネスに新しい価値を生み出すための答えを導き出せるのです。

ビジネスアナリシスは多数の専門視点のもとで実施できる柔軟性があり、IIBA BABOK® v3ではアジャイル、ビジネスインテリジェンス、IT、ビジネスアーキテクチャ、ビジネスプロセスマネジメントの視点から、ビジネスアナリシスの方法論を記述しています。

アジャイルにおけるビジネスアナリシスの重要性

とりわけアジャイル専門視点によるビジネスアナリシスの実施は今後重要性を増していくものと思われます。アジャイルでは常に変化が生じ、組織の取り組みや戦略を継続的に評価し、適応し、調整する必要があります。

その中でビジネスアナリストはアジャイルが完結する最後の瞬間まで変化に対応できるよう解析の実施、必要なプロダクトの供給、そして変化への柔軟性を維持するという重要な役割があります。

そうした解析作業は事前に準備するのではなく、アジャイルチームにとって必要なタイミングで実施し、各種情報を届けることが重要です。そうすることで、適切なタイミングで適切な粒度の情報を確実に利用できるようになります。

ビジネスアナリシス、6つのコアコンセプトモデル

IIBA BABOK® v3が定めるビジネスアナリシスには、重要な6つのコアコンセプトモデルがあります。チェンジ、ニーズ、ソリューション、ステークホルダー、価値、コンテキストから構成されるコアコンセプトモデルはビジネスアナリシスを実践する上で基礎的な考え方になります。

<6つのコアコンセプトモデル>

Noコアコンセプト詳細
1チェンジニーズに答えて現状を変え、企業のパフォーマンスを改善する
2ニーズ企業が対処すべき問題または機会
3ソリューションあるコンテキストにおいて1つ以上のニーズを満たす具体的な方法
4ステークホルダーチェンジ、ニーズ、ソリューションと関係を持つ個人または組織
5価値あるコンテキストにおいてステークホルダーに対する価値、重要性、有用性など
6コンテキストチェンジから影響を受ける状況であり、チェンジを理解するための周辺環境

具体的な方法論ついては「6つの知識エリア」と、各エリアにつき5つのタスク、合計30個のタスクによって構成されています。

ビジネスアナリシスに触れてみる

では、ビジネスアナリシスの一端に触れるような話をしましょう。ビジネスアナリシスにおいて要求とは「聞くもの」ではなく「引き出すもの」です。

例えばBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を実行するにあたり新しいITを導入すると仮定します。その際に、ビジネス側の要求を洗い出す必要があるのですが、ビジネスアナリストは受け身として要求を聞くのではなく、ビジネス側の要求を引き出すよう様々なフレームワークを活用します。

引き出した要求は分析し、妥当性を確認した上で要不要をわけて要件定義に落とし込んでいくので、ビジネス側にとって本当に必要な要求だけが残ります。結局のところ、そうした要件定義ことビジネス側にとっても開発側にとっても幸せなプロジェクトへと導くものです。

この話を聞いて、過去に一度でも「必要のない要件を落とし込んだことがある」という企業はビジネスアナリシスの方法論を吸収する必要性があるでしょう。

まとめ

欧米諸国では、ビジネスアナリストとプロジェクトマネージャーは区別された役割及び職業です。しかし日本では往々にしてプロジェクトマネージャーにビジネスアナリシス的な役割が任されており、負担が大きいだけでなく有効な知識体系がないまま現状課題の解析や改善をしてしまっています。

この機会にビジネスアナリシスの方法論を、ビジネスアナリストという存在に着目してください。そして、プロジェクトマネジメント全体を通して「不満はないか?」と自問自答してみてください。答えが「ある」なら、ビジネスアナリシスの導入をお勧めします。

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