2021.12.21  【責任編集】ラーニング・ツリー【解説】プロジェクトマネジメントにおけるスコープとは?

プロジェクトマネジメントについて学習する中で「スコープ(以下プロジェクトスコープ)」という言葉を見聞きしたことがあるでしょう。プロジェクトを円滑に進め、成功へ導くには欠かせない要素です。

一方で聴き慣れない言葉なので「プロジェクトスコープとは結局何なのか?」と理解に苦しんでいる方も多いでしょう。そこで今回はプロジェクトスコープとは何かをできる限りわかりやすく解説していきます。

プロジェクトマネジメント初心者は、これを機にプロジェクトスコープの概要を掴みましょう。

プロジェクトスコープとは?

一般に使われるスコープ(Scope)は日本語で「視野」や「範囲」などの意味があります。ライフルで標的を狙うための小さな望遠鏡もスコープと呼びますね。

そうした意味が転じてプロジェクトスコープには「プロジェクトでやるべき作業の明確な範囲、1つ1つの作業、それらの期限」を意味します。これに類似する言葉として「プロダクトスコープ」があります。

プロダクトスコープとは従来のプロジェクトマネジメントによって定義されており、「プロダクトやサービスの特徴を決定付ける機能」を意味します。言い換えれば「どんな成果物を作るか?」を定義したものです。

通常、プロジェクトスコープとプロダクトスコープは同時に管理されます。プロダクトスコープによって成果物を定義し、プロジェクトスコープによって作業範囲を定義するというイメージです。

プロジェクトスコープとプロダクトスコープのイメージ

プロジェクトマネジメントではどちらも大切な要素なので、プロジェクトスコープを理解したら次にプロダクトスコープを理解しましょう。

プロジェクトスコープに含まれる作業

では、プロジェクトスコープにはどのような作業が含まれるのでしょうか?従来のプロジェクトマネジメントより必要な作業を整理してみましょう。

1.スコープマネジメントプランニング

ステークホルダー(プロダクトを使用する人々、ビジネス側の人々)と話し合った結果と、プロダクトスコープによって定義した成果物に対してプロジェクトのプラン、プロジェクトのルールなどを計画します。

2.要件収集

ステークホルダーに対するインタビュー、アンケート、ディスカッションなどを通じて得た情報をプロジェクト要件として文書化する作業です。スコープマネジメントプランニングで作成した計画も考慮しながら要件を整理します。

3.プロジェクトスコープの定義付け

プロジェクトの作業範囲、プロジェクトの要件、プロジェクトの計画などを明確に定義します。このプロセスで定義したプロジェクトスコープにより今後の方向性が大きく変わるのでとても重要な局面です。

4.作業分解図(WBS)の作成

プロジェクトスコープの定義付けが完了すれば、WBSを作成します。WBSとは「プロジェクト→タスク→粒度の小さいタスク」のように、プロジェクトに必要なタスクを要素分解しながら整理するためのフレームワークです。

5.プロジェクトスコープの実証

完成したプロダクトに対して実証と評価を実施し、プロダクトが理想的かどうか、あるいは修正が必要かどうかを判断するプロセスです。プロジェクトスコープの定義付けが曖昧だと実証と評価も曖昧になるため、プロダクト完成後に問題が多発することになります。

6.プロジェクトスコープの管理

プロジェクトマネジメント全体にプロジェクトスコープ管理が欠かせません。各スコープが機能しているか、実際のパフォーマンスはどうかなどを要件と比較しながら、プロジェクトマネジメントに必要なリソースの確保や変更の意思決定などをサポートします。

言葉で説明するとシンプルな管理のように思えますが、実際はプロジェクトスコープがその後の採算性などを左右するためプロジェクトマネジメントでは極めて重要な管理となります。

プロジェクトスコープの重要性

プロジェクトスコープが重要である最大の理由は「プロジェクト関係者全員が共通認識を保つため」です。わかりやすい例で考えてみましょう。

あなたは結婚記念日にディナーを作ることになりました。あなたの妻(夫)はメニューの1つにラザニアを希望しました。そこであなたは「美味しいラザニアを食べさせたい」と意気込み、クックパッドでレシピを調べてオーソドックスだが細部にまでこだわったラザニアを作り、記念日のディナーに出しました。

「きっと喜ぶだろう」というあなたの考えとは裏腹に、妻(夫)は「私(俺)が食べたかったのはこういうラザニアじゃない!」と言いました。

妻(夫)が食べたかったのはラグーソース、リコッタチーズ、ゆで卵、ポルペッティーネ(肉団子)が入ったナポリ風のラザニアだったのです。それに対し、あなたが作ったオーソドックスなラザニアはボローニャ風でした。

実際の話ならどんなラザニアでもパートナーが作った料理なら美味しくいただくことでしょう。しかし、これがソフトウェア開発などのプロジェクトなら明らかに大失敗です。

「それなら最初から言ってくれれば良かったのに」が通じるのは夫婦の間だけ。ビジネスでは開発側の要件定義不足として責任を問われます。だからこそプロジェクトスコープを徹底し、プロジェクト開始前にステークホルダーと開発者、その他の関係者も合わせて共通認識を保つことが重要なのです。

まずはプロジェクトスコープの重要性から理解しましょう

従来のプロジェクトマネジメントではさまざまな要素が絡み合い、1つのプロジェクトを成し遂げるためのプロセスを作っています。プロジェクトスコープはその1つであり、各プロセスの中でも特に重要です。

プロジェクトスコープについて学ぼうとするとき、まずはその重要性から理解していきましょう。そうすれば学習効率も上がり、実務で使えるスキルが身に付きやすくなります。

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