2025.11.21
【責任編集】ラーニング・ツリー
若手が“仕事の全体像が見えないまま疲弊する理由──背景にあるのはビジネスアナリシス不足である
若手社員の早期離職が増えている。厚生労働省の「新規学卒者の離職状況調査」では、大卒の3年以内離職率は 32.8% と高止まりしており、
特に入社1〜2年目の離職が微増傾向にある。リクルートワークス研究所も、若手の退職理由として「仕事の全体像がつかめない」「自分の役割が曖昧」といった“構造の不明確さ”が急増していると指摘している。
興味深いのは、この問題が個人の気質や世代論だけで語れるものではない点だ。背景には、仕事の目的・業務構造・期待役割が十分に可視化されていない組織側の課題が横たわっている。
■ オンボーディングが「場当たり的」になりやすい構造
企業が若手育成に最も苦労するのは、入社後のオンボーディングである。経済産業省の調査によると、約 6割の企業で体系的なオンボーディングが整備されていない。OJT依存が続き、業務プロセスや期待成果が文書化されず、担当者の経験に頼った“場当たり的な指導”になりやすい。
パーソル総合研究所の2024年調査では、新入社員の 54.6%が「最初の3ヶ月、仕事の全体像が分からなかった」 と回答している。
これは、若手の理解力や積極性の問題ではなく、組織として“仕事の構造”を示せていないことの表れだ。
■ 「目的が見えない仕事」は、優先順位も見えない
若手がつまずく理由の多くは、能力不足ではない。
最も大きいのは、仕事の目的や全体像が共有されないままタスクに入ってしまうことである。
目的が見えないまま作業に入ると、
なぜその仕事が必要なのか
どこまでやると完成なのか
自分の役割がどこにあるのか
といった基本的な構造を理解できない。
結果として、
優先順位がつけられない → ミスが増える → 自信を失う → 離職に傾く
という悪循環に陥る。
しかしこれは、ビジネスアナリシスの基本プロセスである
「目的の明確化 → 業務の分解 → ステークホルダー整理」 が行われていれば防げる問題だ。
■ 属人化・暗黙知が若手を迷わせる
多くの職場には、ベテランの“経験則”や“成功パターン”が存在する。
例えば、
「ここの承認はこの順番」
「この顧客はこの資料が刺さる」
「先にこのタスクだけやっておくと後が楽」
といった暗黙知である。
だが、若手にとってはこれらは見えない。
つまり、成功への地図が共有されていない状態で仕事をしているのだ。
ビジネスアナリシスは、この暗黙知を構造化し、
業務プロセス
成果物の定義
期待される役割
判断基準
を「見える形」にする役割を持つ。
これらがあるだけで、若手は安心して動ける。
■ オンボーディングこそビジネスアナリシスが活きる領域
ビジネスアナリシスでは、
As-Is(現状の可視化)
To-Be(あるべき姿の定義)
ギャップ分析
といった手法が基本になる。
オンボーディングに当てはめれば、
「この仕事は何を目的に、誰の期待に応えるものなのか」
「どの業務がどこにつながっているのか」
を体系立てて示すことができる。
若手が迷いや不安から離職に向かう前に、
“仕事の地図” を渡すだけで状況は大きく変わる。
■ まとめ:若手の悩みは“個人の問題”ではなく“構造の問題”である
若手が仕事に不安を抱くのは、能力が低いからではない。
“構造が見えない仕事”の中で働いているからである。
業務プロセス、目的、期待成果が可視化されれば、若手は自信を持って仕事を進められる。
組織が若手を活かせるかどうかは、ビジネスアナリシスで仕事をどれだけ構造化できるか
に大きく左右される。















